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研究室の挑戦

熱とエネルギーの可能性に、挑戦【十朱研究室】


伝熱工学研究室 担当:十朱寧教授

伝熱現象を解明し、新しいエネルギーを創出。
技術力と発想力が、より良い世界へ変えていく。

Capter_1 研究課題

熱をコントロールし高性能機器を開発
環境に優しい新エネルギーも研究中

温度差のあるところには、必ず熱移動がある。

例えば、空調や車のエンジン。
夏の熱い室内から熱を外へ逃がす、燃料を燃やして車を動かす…熱移動は、温度差が生じた物体の間に、必ず起こる現象だ。

人間は高熱になると体調を崩す。金属も人間と同じだ。
自動車のピストンやシリンダーをはじめ、モータや変圧器、工作機械。
金属の摩擦によって熱が生じると、その熱によって金属は膨張する。
金属が膨張すると、機械精度や効率が下がってしまう。

それを食い止めるために必要となるのが「冷却」の技術。
熱をコントロールして、より高性能機器を開発する。
そのために、伝熱工学研究室では日夜研究を進めている。

さらなる課題は、新エネルギー創出への挑戦。

C(炭素)が含まれる化石燃料は、O2(酸素)と結合するとCO2(二酸化炭素)が発生する。
地球温暖化への対策として登場しているのが、環境に優しい風力発電や燃料電池などの新エネルギー。
社会的ニーズの高い分野としても注目される研究にも、積極的だ。

冷却と新エネルギー。
研究室では、「熱」をテーマに、使命感を持って研究に取り組んでいる。

Chapter_2 研究室の取り組み

超音波を使い、クリーンな燃料に再利用
太陽光と熱を併用するハイブリッド発電にも挑戦

例えば、超音波によるバイオディーゼル燃料(BDF)の合成。

BDFは、家庭の廃食用油(天ぷら油など)を燃料に再利用したもの。
化学反応で油の粘度を落とせば、軽油の代わりに使用できる良質な燃料となる。
実際に、袋井市のゴミ収集車や静岡理工科大学のシャトルバスの燃料にも使われている、エコロジーかつエコノミーな資源なのだ。

BDFの原料は廃食用油とメタノールで、触媒=水酸化ナトリウムを使って合成する。
弱点は、反応後に燃料自身がアルカリ性となる点。
そのまま車に使用するとダメージが大きいため、生成物を洗浄する必要があるが、そのためには大量の水が必要となる。

もっと環境に優しい、クリーンな合成法はないか。

解決策として、固体触媒を使った合成法を研究。
塩基触媒を利用し、目指すは省エネで環境に対する不可の少ない合成法。

研究室では、超音波を使ってその合成法を研究。
超音波は、音波=エネルギーを上手に使うことで化学反応を促進させることができる。

超音波は液体に入ると、「キャビテーション現象」を起こす。
水の中で音圧が変化し、空気が爆発。その瞬間、非常に大きなエネルギーが発生。
そのエネルギーが化学反応を促進するのだと言う。

実験で導きだされた結果は、先端機器分析センターで学生自身が分析を行う。
他の研究室が研究するエンジンを使用し、廃棄ガスや動力の測定をすることもある。

さらに、太陽電池の研究も活発だ。
太陽電池で、光のエネルギーを電気エネルギーに変換するソーラー発電。

しかし、ソーラーパネルは気温が高すぎると、熱で温度が上昇し、変換率が下がってしまう。
そこで、太陽光を「熱」と「純光」に分離。
熱と光を併用してハイブリットな発電ができれば、変換率は良くなるのではないか。
現在、実験結果は、想像通り。より効率の良い結果を求めて、実験を続けている。

Chapter_3 研究室×企業

何度もシミュレーションし実験、分析。
企業の求める最適な結果を導き出す

複数の共同研究を同時進行で行うことも珍しくない伝熱工学研究室。
例えば、企業との共同研究では、環境装置に関する研究を行っている。

我々の生活に欠かせない、エアコン。

室温を調整しているのは、室外機と室内機の間をループする物質「冷媒」。
熱は多いところから少ないところへ移動するという性質を持ち、冷媒は蒸発する時に、まわりから熱を奪う。
例えば、注射の前にアルコール綿で腕を拭くとひんやりするように。

暑い夏、室内の熱を奪い気体となった冷媒が、室外機に移動。
冷媒は熱交換器で圧力をかけられ、高圧高温状態となり、熱を室外に送り出す。
つまり、室内機と室外機にある熱交換器を介して、冷媒が室温を保っているのだ。

高圧高温となる熱交換器の冷却には、ファンが使われている。
室外機は、その名の通り、必ず部屋の外に置かれる。

温暖な静岡県では問題ないだろう。
しかし、北海道などの寒冷地ではどうだろうか。

気温が下がり、凍結現象が起こると、当然、室外機とファンがダメージを受ける。
防雪フードでダメージを軽減させようとすると、今度はフード自身が空気の流れを妨げてしまい、結果的に熱交換率が下がってしまう。

この問題をクリアする、防雪フードの最適な形状があるはず。
それを見出すための手段を探すための、共同研究。

まずは、CAE(計算機支援工学)を使い、設計した図面をパソコン上で解析する。
設計したモデルに様々な条件を与え、複数のシミュレーションを実施。

例えば、ファンの回転数。
きちんと評価指数を作れば、防雪フードに当たった時の空気の流れの変化や圧力の変化を、正確にシミュレーションできる。

ある程度の傾向をつかんだ上で、実際に防雪フードを作って実験、検証を行う。
従来モデルとの比較検討も行い、結論が出れば、実際に学生が社員の前で発表を行う。

しかし、単に効率が良いだけでは、企業に採用されない。

研究室では以前、ある傾斜の角度をもつ防雪フードを提案した。
…が、効率良く雪を落とすためには、その角度を変更する必要があるという。
企業には、1つのものを判断するのに、複数のパラメータがあるのだ。当然、コスト面も重用視される。

理論上で計算した結果が良くても、企業側の求める規定に合わなければ不採用。
それは、実際に企業と触れ合わなければわからない現場の状況。

共同研究では、学生と社員との熱いディスカッションも繰り広げられる。
学生は実践の場で学び、試行錯誤を繰り返し、成長していく。

Chapter_4 研究がもたらす未来

技術発展の副作用を取り除くために
無限の可能性が地域の発展に繋がる

「工学分野で人間を幸せにしたい」
これは、研究室の担当である十朱教授の言葉だ。

発電技術は飛躍的に発達した。
しかし副作用として環境に不可を与えるケースも多い。
化石燃料を多量に使うことは、地球全体の問題に関わるのだ。

それは本当の幸せとは呼べない。
環境に優しく、利便性の高い技術を開発できれば、もっと住みやすい環境を作ることができるはず。
その環境づくりに技術者として貢献することを目標としている。

熱・エネルギー分野の発展は、地域の地場産業の発展に繋げることができる。
例えば、今まで以上にクリーンで便利なエネルギーを開発できれば、袋井市の特産品でもあるメロン農家の温室をもっと効率よく温めることができるかもしれない。

さらに視野を広げれば、新エネルギーは日本を救う可能性をも秘めている。
もし電力に代わるエネルギーを開発できれば、地震などの災害時にも困らないだろう。
熱とエネルギーの無限の可能性に、挑戦できる研究室だ。

Specoal_1 伝熱工学研究室の雰囲気

目標に向かってモチベーション高く
失敗も恐れず課題解決力を身につける

目標がはっきりしている伝熱工学研究室。

模索しながら進めている研究は、先輩が基礎を作り、受け継いできているものも多い。
頑張れば頑張るほど成果が上がるため、学生のモチベーションも高い。

大学院生と一緒に研究をすることも多く、先輩は後輩へ実験方法はもちろん、データのまとめ方や発表の仕方までを教えている。
研究室全体の仲間意識が高い研究室だ。

企業に入れば、勉強の成績よりもいかに課題を上手にクリアできるかが重要となる。
プレゼンやマネジメント能力も必要となる。
共同研究では、海外企業で発表する機会もあり、英語力も求められる。

実践的に学ぶことができるのも大学の研究室ならでは。
技術力とともに、社会人として成長するための考え方を身につけていく。

十朱教授は、失敗も知識の蓄積になると話す。
解決策を探し、実験し、解析する。
学生自らの考える力を伸ばし、失敗したら別の方法のヒントを与える。
それが、学生の自主性を大切にする十朱教授のやり方だ。

Special_2 伝熱工学研究室への道

原理を理解し理論的に説明する
ツールを使いこなす能力が必要だ
研究は、ただ実験や分析をすれば良いのではない。
論理性をきちんと身につけ、「説明」できることが大切だ。

技術が発達した現代、解析ソフトを使えば、誰でも簡単に熱移動の解析結果を導きだせる。
しかし、ソフトに頼るのでは意味がない。
対流熱伝達の方程式をきちんと分解して原理を理解し、人に説明ができて初めて本当の理解に繋がる。
基礎方程式は高校で学んだ熱力学知識の応用、研究には勉強も欠かせないのだ。

「世界を構築するには、数学がないとできない」と十朱教授は語る。

ただ、数学がすべてではない。文系の学生でも研究はできる。
工学系の研究の一つのツールとして数学を使用しているのであり、数学を覚えることが目的ではないからだ
文系で言うフィールドワークは理系で言えば実験、文系で言う分析は理系のデータ処理にあたる。
つまり、文系でも理系でも、使うツールが異なるだけで本質は変わらないのだ。

知識以上に発想力も求められる研究の現場。
発想したものを設計して開発する、実験や計算をして分析する…異なるツールを組み合わせて研究は進んでいく。

技術のみを磨くのではなく、作り上げるシステム全体を見てモノを考える力を身につければ、能力はどんどん向上していくに違いない。

研究を通して、技術力と発想力を身につける。
工学分野で世界に貢献するという意欲を持って、取り組める研究室だ。

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