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研究室の挑戦

“プラスチック”が、ガンを治す時代へ


「がん細胞の場所を突き止め、そこにピンポイントで抗がん剤を投与する」「患部に特殊なシートを貼ってがんを治療する」…そんな医療が実現するのもそう遠くない—-。
現在、がんは日本国内で最も人の命を奪う病だ。厚生労働省の平成28年人口動態統計の年間推計によれば、一年間で約37万4000人が犠牲になっている。これは全死亡者数約129万6000人のおよそ29%に当たる数字だ。
そんな恐ろしいがんを、“プラスチック=高分子(ポリマー)の一種”を使った医療でより確実に治療しようという試みがなされている。

医療現場が注目する
ポリマー・機能性高分子
「ポリマー」はプラスチック製品、化学衣料、コンタクトレンズなどとして我々の身の回りにあふれている。医療の現場でも縫合糸・カテーテル・人工臓器などの素材として既に使用されている。そんなポリマーの中で、温度や光、磁力、特定の分子、pH(水素イオン濃度)などを認識することで、形や性質を変える特殊な機能を備えた“スマートポリマー(刺激応答性高分子)”が医療用の素材として注目されている。

患者の性別・年齢・病状に応じた
がん個別治療の可能性が広がる


多くの種類があるがんの治療薬や造影剤(血管や臓器などを画像診断する際に患部の様子を分かりやすくするための薬剤)を、患者の性別・年齢・病状に応じて判断し、スマートポリマーを使ってその場で組み合わせる技術も開発されている(表を参照)。

例えばがん細胞特有の性質を認識するスマートポリマーを使って任意の成分を調整・投与すると腫瘍の場所が特定できることもマウス実験で証明されている。この技術開発に携わった、静岡理工科大学 物質生命科学科講師の小土橋陽平氏は「将来はビッグデータの利用で、人それぞれに合ったがん治療法がもっと細かく求められるようになりますが、それに対応できる技術と言えます」と話す。

広がる医療用ポリマーの可能性
もっともポリマーの医療利用はがんに限ったことではない。病気の早期発見には高価な精密医療機器や高度な技術を必要とする場合があるが、病気のシグナルを検出するポリマーと組み合わせることで、安価にいつでも・誰でも・どこでも診断可能になるような技術も開発されており、実用化に向け前進している。
前出の小土橋氏の研究室ではインフルエンザなど“ウイルス感染予防”に転用するための研究も行われているという。「将来的には水の浄化など環境改善に役立つポリマーの利用方法も研究してみたい」(小土橋氏)との言葉どおり、プラスチック…いやスマートポリマーが、さまざまな社会問題を解決してくれる時代が来るだろう。

静岡理工科大学
小土橋 陽平 准教授


「実用されてこその科学」をモットーに、基礎研究から実用化まで包括的な研究を進める小土橋講師。機能を有する高分子を開発し、バイオマテリアルとして医療現場での応用を目指しています。病気の早期診断や治療をサポートする機能性高分子は、40兆円を超える日本の医療費を削減し、quality of lifeを高めることが期待されます。
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