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研究室の挑戦

環境変化に適応し高電圧に耐えるモータの開発。


2つの研究、1つの未来
 世界的に需要が高まっているEVだが、現在、モータ駆動時にかかる大きな電圧(サージ電圧)によって、コイル絶縁が破壊されてしまうことが問題視されている。コイルの巻線に使うエナメル線の被膜を厚くする対策があるが、それでは小型化や効率化を妨げる。そこで本学では、住友精化(株) との共同研究「発電機、モータ向けエナメル線用機能性絶縁材料の開発」において、試料の絶縁破壊特性の評価およびその試料を用いたモータで実証実験をおこなっている。


エナメル線の絶縁破壊特性の評価

鈴木 敦久さん Suzuki Atsuhisa
(静岡県立磐田北高等学校出身)
本学大学院進学

 EVの動力源となるような高出力モータを駆動するためには、かなりの高電圧、大電流を要する。加えてEVは季節を問わず、地球上のあらゆる場所での走行が想定される。日本に限っても冬の北海道と夏の沖縄では、随分と違った環境になる。このため、EV用モータで使用する巻線(銅線を絶縁被膜で覆ったエナメル線)は、さまざまな意味でタフである必要がある。「高電圧工学研究室」では、どんな環境下においても高電圧に耐えられる絶縁材料を開発するため、種々のエナメル線の絶縁破壊特性を評価している。

「技術で暮らしを支えたい」が原動力

立ちはだかる壁


データがばらつく要因は何か

 エナメル線に使われる絶縁材料は、湿度や温度などの変化によってその特性に影響が及びます。そこで温度や材料を変えながら実験をおこなったところ、安定したデータが取れるサンプルと、そうでないサンプルが出てきました。何が原因でデータにばらつきが出ているのか。どの値が真の値なのか。その見極めにはとても苦労しました。

その壁をどうやって乗り越えたか

文献調査で知識を深める

 先生にアドバイスをいただきながら、要因分析のための文献調査に取り組みました。一般的なWeb検索はもちろん、専門書や論文、学術誌に当たることも茶飯事。他にもセミナー参加を通じて専門知識を深め、実験結果を考察・検証し、新たな仮説を立て、また実験に臨むというサイクルを繰り返すことで「正しいデータ」を揃えていきました。

そして、私の未来像


研究開発職で考察力を活かす

 研究で身につけた物事の因果関係を明らかにしていく手法、実験で得られたデータを読み解く考察力などを将来に役立てていきたいと考えています。具体的に目指しているのは、企業の研究開発職。EVをはじめ、太陽光発電、リニアモーターカーなど、未来の暮らしを支える技術に貢献したいです。

モータの特性評価

山本 良寛さん Yamamoto Yoshihiro
(静岡県立浜松湖北高等学校出身)

 モータは小型化・高出力化に伴い、高回転化・高電圧化の一途をたどっている。いかに薄くて丈夫なエナメル線ができたとしても、モータに使えなければ実用化は見えてこない。本研究における「システムコントロール研究室」の役割は、「高電圧工学研究室」が評価したエナメル線材料をモータの巻線として使用した際、どのような特性が出るのかを評価することである。
※本研究はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業にも参画し、コアレス発電機を用いた実証実験により7%の損失低減を実証した。

環境負荷も低減する高効率モータを作りたい

立ちはだかる壁


何をもってモータを評価するか

 本研究は「何を測定すればモータの性能を証明できるのか」を探るところから始まりました。例えばEVで使われるモータは低速大トルクから高速低トルクまで使われる領域が広く、何をもって評価するのか基準を定めないことには前に進みません。
スタートから難しい問題にぶち当たりました。

その壁をどうやって乗り越えたか

「損失評価」に着目

 モータを評価する上で一番の指標はやはり効率です。効率を測るには、電気エネルギーが機械エネルギーに変換される際に生じる損失を測れば良いのではと考え、「損失評価」に着目。実際の機器において、モータが使用される条件に近い環境を再現するために、測定条件を検討しながら評価基準を確立していきました。

そして、私の未来像


目標を上回る成果を実証

 評価基準を決めるという難題から始まった本研究。最初の数カ月は思うような結果が得られず、ひたすら測定を繰り返すなどの苦労がありましたが、挑戦し続けた結果、NEDOの事業※においては損失低減7%の目標に対して、それを上回る10%の損失低減を実証することができました。研究で培った多角的なものの見方を次のステージでも活かしたいと考えています。

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