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研究室の挑戦

建築家に必要なのは「思いやりのある自己主張」Vol.2


有名な建築家の建築物には個性の強いデザインが多い。しかし、それは使う側の目線で考えた「思いやり」から生まれる場合が多いのも確かだ。例えば、建築家・古谷誠章氏とNASCA1級建築士事務所が設計した静岡理工科大学・建築学科棟「enTree(えんつりー)」。デザインの先進性だけでなく、建築学を学ぶ者に対する思いやりがたくさん詰まった建築作品である。

通常見えない部分が建築では重要あなたは建物に入った際、構造や素材がどうなっているのか確認したことはあるだろうか。同様に、建物の「天井が何メートルか」「柱と柱の距離は何メートルか」を気にしたことはあるだろうか。建築に関わる者にとって、こういった“見えない部分・気にならない部分”こそ、その建物を理解するために非常に重要なのである。

デザインと構造の関係を感じ取る静岡理工科大学・建築学科棟「enTree(えんつりー)」は建物の裏側がしっかりと理解できるようにデザインされている。この建物は、ブレース付ラーメン工法を採用しているが、そのブレース(筋交い)やラーメン(額縁)の構造を敢えて剥き出しにしている。ちなみに剥き出しなのは鉄骨だけではない。配管・配線、その殆どが隠されることなく存在している。ここで過ごす学生はわざわざ建築現場を見学し説明を受なくとも日常的に鉄骨構造、配管、配線などの仕組みに接し、構造を記憶に留めることが出来るのだ。こうした「体験的記憶」の効果は長期的に見れば侮れない。

更にここで注目していただきたいのはこの剥き出しの構造がインテリアデザインとして成立し、スタイリッシュな印象を与えているということだ。学生達はこういったデザイン手法も自然と身につけることになる。

空間デザインに必要な “スケール感覚”建築家の思いやりは “スケール感覚”というキーワードでも紹介できる。製図や図学の授業が行われる1階の“デザインスタジオ”。その天井に目をやると20cm間隔で刻まれたドットマークが目に入る。3.6 mの間隔で奥行き18 mが示された4本の柱、そのうちの1本には30cm刻みで3.6mまでの高さが刻まれている。ここデザインスタジオではスケールをイメージする必要はない。体感的にスケールを理解すればいいのだ。開放感ある天井高、安らぎを感じる広さ、人が違和感なくすれ違える通路の幅、ここで図面を描き続けた学生たちは自らのスケール感覚を自然と洗練させていくことだろう。

自然体で身につく建築センス通常、知識と経験を別々で学ぶ建築。しかし静岡理工科大学・建築学科棟「enTree(えんつりー)」は知識と感覚を自然とすり合わせていける。建築家が未来の学生のために考えた、活きた教材 “enTree”、そこで過ごす学生は建築家の「思いやりのある自己主張」に囲まれて成長していくのだろう。

静岡理工科大学・建築学科棟「enTree(えんつりー)」、そこは建築を学ぶ者への思いやりが沢山詰まった空間。建築を学んでみたいと考える人には是非ここに来てそんな「思いやりのある自己主張」を感じてみて欲しい。
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