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研究室の挑戦

メカ好きの果てなき挑戦


ロケットの技術で生活をもっと便利に。

摩擦を抑制したボール減速機の開発
扇風機やロボット掃除機といった家電製品にも使われる減速機。モータにつながる複数の歯車を用いて回転速度を減らし、減速に反比例するトルク(回転する力)を出力する減速機は、ロケットのエンジン部品にも搭載が期待されている。
「ヴィークル工学研究室」では、次世代の国産ロケットで使用するボール減速機の研究・開発が行われている。

 97.6%。これは日本のロケット打ち上げの成功率だ。1970年に日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げが成功して以降、これまでに301機(※)の人工衛星がロケットで宇宙へ飛び立っている。また、国産ロケット自体も1994年の大型ロケット「H-Ⅱ」から2020年3月までに41号機を数える。
 ロケット開発の準備期間は10~20年といわれ、最先端技術が結集されている。ここで
使われた技術は、その後、世の中をもっと便利なものへと変えていく。例えば、打ち上げられた人工衛星によって、天気予報はもちろん、カーナビや地図アプリでの位置情報の把握、飛行機内でのWi-Fi利用など、現代の生活に欠かせないサービスが誕生した。
ロケット開発と聞くと遠い世界の話に思えるかもしれないが、実は私たちに近しい存在でもあるのだ。
 次のロケット開発に向けて、課題の一つとされているのが、ボール減速機で発生する摩擦だ。トルクの伝達効率の低下や摩耗による減速機の寿命低下など、ロケットの信頼性にもつながる重要なファクターだ。ヴィークル工学研究室では、JAXAの研究開発部門などと共同で開発をおこなっている。現在、試験サンプルを用いた解析により、さらなる性能向上を目指した研究が続けられている。
※出典:経済産業省HP「国別 人工衛星の打ち上げ数」(2022.07.22)

大庭 裕一朗さん Oba Yuichiro
理工学部 機械工学科
(静岡県立川根高等学校出身)
本学大学院進学

イメージした研究ライフ

近づけば近づくほど遠い世界

 初めて、研究室紹介で先生方の話を伺ったときの感想は「好きなことを研究してて楽しそう」
でした。 何も知らずに遠くから見ると自分と近しい人たちという印象を持ちました。でも、実際に配属されるとその印象は覆されました。ひとことで言うと、近づくほど遠い世界。研究室はたくさんの
研究資料であふれ、先生はもちろん、先輩も高い専門性と知識を身につけた方たちばかりだっ
たのです。接してみると親しみやすい方たちの内に秘められた、研究に対するものすごい熱量に、配属当初は自分との差を突きつけられた気がしました。

立ちはだかる壁

ボールの動きを数式に落とし込む

 私は現在、JAXAなどとの共同研究で次のロケットに搭載することを目標とした「ロケットエンジンバルブ用減速機の開発」をおこなっています。一般的な歯車を使ったものではなく、ボールを用いた減速機にしたのは、小型化が可能で摩擦が少なく振動抑制が期待できるからです。そこで重要なのが、ボールが通る溝の形状。軌道を頭の中でイメージして、3DCADで構築した溝を解析するのですが、複素ベクトルを用いた数式に落とし込む定式化が、とにかく難しいのです。なぜならボールの軌道に加え、減速機の各パーツの動きやすき間を考える必要があったからです。同時に考えることの多さと定式化への理解不足で、研究が進まないという状況に陥りました。

その壁をどうやって乗り越えたか

先生に何度も聞いて理解を深める

 定式化への理解を深めるために私がおこなったことは、先生に何度も質問することでした。自分では「できた」と思っても、改めて見直すと意味が分からなくなってしまうため、先生に定式化をしていただき、まずはその意味を理解するという方向に考えを改めました。自分の頭の中だけでどんなに考えても解決できないのなら、一歩でも研究を前進させるために、高い専門性と知識のある周囲の人を巻き込むことにしたのです。溝の構築までは3DCADで簡単にできるので、先生や先輩方にアドバイスをいただきながら、今も難しい定式化と
向き合っています。

そして、私の未来像

学会で賞をとって、自分に自信を持ちたい

 私は小さな頃からラジコンなどの機械が好きで、将来はモノづくりに従事する技術者になりたいと考えています。ただし、現時点では自分が学んできたことを社会に還元できないと感じているので、より高い専門性を身につけるため大学院への進学を決めました。直近の目標としては、日本機械学会などの学会で発表し、賞を獲得すること。研究室の先輩も受賞経験があり、目指すべき目標です。研究を通し
て大学内外の方々と接する中で身につけたコミュニケーション力を駆使して、研究内容を的確に相手に伝え評価を頂き、自分にもっと自信を持ちたいと思っています。

共同研究で周囲から刺激を受けることで、人間力の成長に期待!

私の考えている共同研究は、自分一人だけでどうにかするものではありません。今回のボール減速機の開発メンバーにはJAXAの方や企業で働いている方もいます。研究活動では、学生がJAXAや企業の方々とコミュニケーションをとりながら三位一体となって研究を進めています。このように共同研究とは、学生が主体性を持ちながら、周りのさまざまな人たちから刺激を受けて、研究を進めていき、その過程が学生自身の成長につながっていくものだと思っています。JAXAや企業の方と接する中で、大学内では聞けないような話が始まると、目を輝かす学生がたくさんいます。こういった経験を通じて人間的にも成長していける場が、共同研究にはあると私は確信しています。

野﨑 孝志 教授 Nozaki Takashi
理工学部 機械工学科
ヴィークル工学研究室

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