ダイヤも炭も元は炭素…結びつき方で変わる原子の秘密
鉛筆の芯もダイヤも同じ原子でできている
鉛筆の芯(グラファイト)もダイヤモンドも、炭素原子からできていることは比較的知られている。軟らかな鉛筆の芯と鉱物中で最も硬いダイヤモンド…同じ原子なのに、なぜこのような違いができるのだろうか? ダイヤモンドは1つの原子に4つの原子が強力な“共有結合”でくっついているため高硬度になっている。一方、鉛筆の芯(グラファイト)の構造は、炭素原子で織りなす“シート”が重なっている、といえばイメージできるだろうか。層の間には非常に弱い“分子間力”というものが働いてようやくくっついている状態で、力を加えるとはがれてしまう。これが芯が軟らかく「紙に文字が書ける」ということに繋がる。
鉛筆の芯(グラファイト)もダイヤモンドも、炭素原子からできていることは比較的知られている。軟らかな鉛筆の芯と鉱物中で最も硬いダイヤモンド…同じ原子なのに、なぜこのような違いができるのだろうか? ダイヤモンドは1つの原子に4つの原子が強力な“共有結合”でくっついているため高硬度になっている。一方、鉛筆の芯(グラファイト)の構造は、炭素原子で織りなす“シート”が重なっている、といえばイメージできるだろうか。層の間には非常に弱い“分子間力”というものが働いてようやくくっついている状態で、力を加えるとはがれてしまう。これが芯が軟らかく「紙に文字が書ける」ということに繋がる。
笠谷教授が手にしているものはグラファイトの原子が結合してできている”シート”の原子模型
「構造解析」が新物質へ通ずる道を拓くしかし、である。“シート”を織りなす原子の間はすぐ剥がれるどころか、ダイヤモンドよりも強い“共有結合”でつながっていることが分かっている。その強力な“シート”を筒状にしたような形の分子「カーボンナノベルト」は、約60年も実現せずにいたものの、2017年4月に名古屋大学の研究チームにより世界初の合成に成功した。高硬度とその軽さから、曲げられるディスプレーや省電力の超集積CPU、バッテリーや太陽電池の効率化など、幅広い応用が期待されるという。これらの発見には「構造解析」が大きな役割を果たしている。
スリットや穴の空いたフィルタを光の前にかざすと、光は隙間を通ってさまざまな形となり壁に映る。光の形からどんなスリットや穴が空いていたのかを類推することもできる。これがX線回折の仕組みだ。
目に見えない原子を照らし出す「X線」「構造解析」とは、物質の構造や性質について知るために原子配列や電子の分布を調べることである。その際、原子は光の波長よりも小さいため光より波長が短い“X線”を使う。X線はさまざまな方向から物質に当てることで原子の配列などが測定できるのだが、仕組みは海の防波堤の様子を想像するとわかりやすい。「波が防波堤間の狭い隙間を通ると、波が大きく広がり、さらにその他の狭い隙間から通って広がった波と重なったりしますね。その波の様子を調べることで、防波堤の隙間がいくつあるか、どう配列されているかが分かるはず。それはX線でも同じことです」と話すのは誘電体の構造解析を研究する静岡理工科大学の笠谷祐史教授だ。これが物質の構造を全体的に知ることができる「X線回折」である。これを局所的に調べることのできる「XAFS(ザフス)法」と合わせて、詳細に物質構造を解き明かしていくのである。
物質構造を深く知ることが「新たな物質」を作るカギ構造解析によって、硬い・軟らかい、電気を溜めやすい・溜めにくい、熱を通しやすい・通しにくい…など物質の性質である「物性」がなぜ・どうやって生まれるのかを知ることができれば、今までになかった新しい物質をつくることができる。技術が進歩し、もっと深く細かな部分まで構造を解析できるときが来れば、さらに開拓すべきエリアが広がるだろう。何はともあれ、新たな物質を作るための最初の扉のカギを握るのが「構造解析」なのは間違いない。
静岡理工科大学
笠谷 祐史 教授
X線解析・吸収を利用して物質の構造を解析、原子や分子の配列・結合状態などを明らかにし、物性の発現の仕組みを解明する研究を重ねています。“少し強い光を当てただけで世界が変わる“という繊細な原子の世界ですが「難しいことほどわかると楽しい」と知的好奇心をもって取り組んでいます。現在はセンサーに使われる強誘電体の構造解析を行っています。
笠谷 祐史 教授
X線解析・吸収を利用して物質の構造を解析、原子や分子の配列・結合状態などを明らかにし、物性の発現の仕組みを解明する研究を重ねています。“少し強い光を当てただけで世界が変わる“という繊細な原子の世界ですが「難しいことほどわかると楽しい」と知的好奇心をもって取り組んでいます。現在はセンサーに使われる強誘電体の構造解析を行っています。