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研究室の挑戦

海藻探しは、宝探し。


見つけたい、未来に役立つ新物質。

SDGs対応型(天然生物由来)の防汚網の開発

研究室の名にある「天然物化学」は、生物がつくり出す有用な物質を発見し、その作用を明らかにする研究分野。
中でも天然物の探索研究は「モノとり」と呼ばれ、よく宝探しに例えられる。
未利用生物資源から世界で初めての化学物質を見つけるというロマン、課題解決の可能性を追う研究が、静岡理工科大学で展開されている。
 生物はさまざまな化学物質を生産しながら生きており、このうち、糖、アミノ酸、脂質、核酸など生命活動に必須な物質を「一次代謝物」、生命活動に必須ではない独特の物質は「二次代謝物」と呼ばれる。人類は古くからこの二次代謝物の中に含まれる有用成分を見つけ、医薬品、香料、染料などに利用してきた。
海洋生物は種に応じ、生体内に数多くの二次代謝物を生産する。どこにでも見られる「紅藻ソゾ」は、外敵から身を守るためにハロゲン原子を有する低分子有機化合物を蓄積することが知られており、天然物化学研究室はその防御機構に着目した。
 水産養殖場で使用される網類は、海中に長く浸していると、フジツボやイガイなどの汚損生物が付着する。付着すると網の目が塞がれたり、網の重量が増えたりするなど漁業関係者に多大な被害を与える。対策として、農薬系化合物を含む防汚剤が塗布されてきたが、それらは環境問題を引き起こす。そこで、天然物化学研究室では、海藻由来の生物活性物質を利用して、防汚性を備えた毒性の少ない安全な薬剤を開発できないかと考えたのだ。研究テーマは「海産の含ハロゲン化合物は、防汚性を備えた環境対応型の養殖網となり得るか」。

長田 大輝さん Osada Daiki
(静岡北高等学校出身)
本学大学院進学

イメージしていた研究ライフ

満たされる知的好奇心

 高校3年生の時に当研究室を見学する機会があり「未利用資源から環境破壊の解決につながる物質があるかどうかを確かめている」という話を聞いて、自分もその分野に貢献したいと強く思いました。以来ずっと、当研究室に入ることを目標にしていたので、まさにイメージ通りの研究ライフが送れています。ただ、「静岡県の浅海に生育する海藻種の豊富さ」と、そこに含まれる「二次代謝物の多様性」には驚かされました。フィールドワークを兼ねて野外調査に出かけ、仲間と一緒に天然有機化合物を探索すると、いろんな発見があります。知的好奇心が満たされるのもこの研究の魅力ですね。


※写真
「二次代謝物」を得るため、藻類や軟体動物の採集活動も研究の一環。

立ちはだかる壁

自然相手のサンプル採集と技術を要する構造解析

 フィールドワークは天候や潮の影響を受けやすく、失敗に終わることもあります。ソゾは漁師さんが相手にしないこともあり、自分で取るしかありません。めげずに何度も出かけていました。また、私の研究は、天然有機化合物の探索のみならず環境にやさしい漁網の開発を目的にしているので、ソゾから抽出した物質を評価し、どう製品に結びつけていくかも課題でした。先端機器である核磁気共鳴装置(NMR)を用いた構造解析は、熟練の技術を要するため、一筋縄ではいかなかったですね。

その壁をどうやって乗り越えたか

持ち前の探究心を発揮

 ソゾは浅瀬に生育するので潮の満ち引きを調べて、一番潮の引く干潮の時に目的の磯場に向かうようにしました。静岡県内の磯場は、ほぼ全て行きましたね。NMRを用いた構造解析については、パズルを解くように導き出すところがあって、元々パズルゲーム好きな私にとって非常に興味深いものでした。これまでに30種以上の解析を経験してきましたが、培った技術や知識は、未知の化学成分の解明に役立つと確信しています。
 また、着生阻害活性試験において、これまでとは種類の異なる生物(ムラサキイガイ)を対象とした試験の検討・評価を提案するなど自分で研究を創意工夫して楽しむようにしました。現在の研究については、汚損生物が寄りつきにくい漁網のみならず、最終的にはスプレー状にして吹き付けられる製品を目標に進めています。

そして、私の未来像

弟の長年の悩みを解決したい
 研究過程で静岡県には未利用・低利用資源由来の生物活性物質がたくさんあることを知りました。将来はこれらを使って人々の生活を豊かにする製品開発に取り組みたいと強く思いました。具体的には、大学院で修士号を修得し、地元企業で研究・開発職に就きたいと考えています。目標としているのが、スキンケア用品や化粧品開発です。私には弟がおり、肌が荒れやすい体質に悩まされているのを身近で見てきました。天然由来の製品によって、治すまではいかなくても、防いだり和らげたり、何か効果のあるものを自分が発見できたら、こんなにうれしいことはないですよね。
 他にも、自分の専門分野や意見に偏向することなく、目的に沿った課題解決に積極的に取り組むことで、さらなる研鑚を積みたいとも考えています。


 私の研究室は、利用価値を見出せていない雑海藻と呼ばれるものからの「新しい機能性を持つ新規化合物の発見」をテーマにしています。これまで未確認であった化学物質を発見することも夢ではなく、実際に当研究室からはもう何人も「新規物質発見者」が生まれています。長田さんはそうした新規化合物の探索から一歩踏み込んで、高分子素材と天然由来の化合物を混ぜ合わせた、環境にやさしい製品開発に取り組んでいます。主体的に「このテーマでやりたい」というアイデアがあれば、どんどんチャレンジするのが当研究室の方針です。私たちと一緒に、研究を楽しみませんか。

一緒に楽しんで研究しましょう。

 私の研究室は、利用価値を見出せていない雑海藻と呼ばれるものからの「新しい機能性を持つ新規化合物の発見」をテーマにしています。これまで未確認であった化学物質を発見することも夢ではなく、実際に当研究室からはもう何人も「新規物質発見者」が生まれています。長田さんはそうした新規化合物の探索から一歩踏み込んで、高分子素材と天然由来の化合物を混ぜ合わせた、環境にやさしい製品開発に取り組んでいます。主体的に「このテーマでやりたい」というアイデアがあれば、どんどんチャレンジするのが当研究室の方針です。私たちと一緒に、研究を楽しみませんか。

鎌田 昂 准教授
Kamada Takashi
理工学部 物質生命科学科
天然物化学研究室

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