静岡県発の航空宇宙産業が誕生する!その真相
人はいつから空を飛びたいと思うようになったのだろうか。
その憧れを推進力に、航空宇宙工学はすばらしい進歩を遂げ、
想像を創造へとつなげてきた。
その推進力はやがて「Aerospace Industry(航空宇宙産業)」を産み出すにいたり、
今や宇宙開発はNASAやJAXAといった国家機関にとどまらず、
大企業はおろかベンチャーまでも参入する広がりを見せている。
そしてその波は、静岡県のような一地方自治体をも動かそうとしているようだ。
ごく近い将来、静岡県内のいたるところで、
航空宇宙産業を普及させようとする動き。
その真相に迫った―。
その憧れを推進力に、航空宇宙工学はすばらしい進歩を遂げ、
想像を創造へとつなげてきた。
その推進力はやがて「Aerospace Industry(航空宇宙産業)」を産み出すにいたり、
今や宇宙開発はNASAやJAXAといった国家機関にとどまらず、
大企業はおろかベンチャーまでも参入する広がりを見せている。
そしてその波は、静岡県のような一地方自治体をも動かそうとしているようだ。
ごく近い将来、静岡県内のいたるところで、
航空宇宙産業を普及させようとする動き。
その真相に迫った―。
実は身近なところにある
航空宇宙工学の近未来
航空宇宙工学の近未来
「自分には関係ない」と思われがちな航空宇宙産業だが、航空や宇宙開発に用いられた技術は、一般的な家庭の暮らしの中にもいろんな顔をして入り込んでいる。その最たるものは、人工衛星を利用するGPSだろうか。クルマで出かける際、カーナビをまったく使わないという人には最近なかなか出会えないし、スマホで利用する人も多いだろう。些細なところでは、バッグなどに使われる「ベルクロ」と呼ばれるマジックテープも、元はアポロ宇宙船の船内でペンなどを壁に留めるために開発されたものだし、災害時に寒さを凌ぐために被るヒラヒラした銀色の断熱シートも、衛星の断熱材の流用である。
そのような航空宇宙工学の技術を、もっと身近に、幅広く産業や生活シーンに活用していこうと、静岡でも県を挙げて動き始めている。話を伺ったのは、JAXAの指示のもと民間企業で30年間宇宙ステーションに物資を運ぶ宇宙船の開発・運用に携わり、現在は航空宇宙に興味を示す県内のさまざまな企業や行政機関などで顧問やアドバイザーを務める増田和三教授だ。
「今は静岡の中で、県庁をはじめ各メーカーにも航空宇宙産業を立ち上げたいという思いを持った方がたくさんいるんですね。私も大学で航空工学を教えていて、その分野のエキスパートを育てていきたいという思いもあります。すぐに、というほど簡単にはいきませんが、数年の間には私の大学の卒業生が就職先として選べるような、魅力ある航空宇宙の技術を持った企業が成長してもらえれば、といろいろな場所でお手伝いさせてもらっています」
具体的にはどんなカタチで静岡に航空宇宙産業が誕生するのか。夢に満ちたその構想の一部を紹介しよう。
「今は静岡の中で、県庁をはじめ各メーカーにも航空宇宙産業を立ち上げたいという思いを持った方がたくさんいるんですね。私も大学で航空工学を教えていて、その分野のエキスパートを育てていきたいという思いもあります。すぐに、というほど簡単にはいきませんが、数年の間には私の大学の卒業生が就職先として選べるような、魅力ある航空宇宙の技術を持った企業が成長してもらえれば、といろいろな場所でお手伝いさせてもらっています」
具体的にはどんなカタチで静岡に航空宇宙産業が誕生するのか。夢に満ちたその構想の一部を紹介しよう。
SFのような未来がすぐそこに!?
超現実的な「ドローン宅急便」構想
超現実的な「ドローン宅急便」構想
たとえば静岡県では、産学官が連携して無人航空機を利用したビジネスモデルの振興を図ろうと、『静岡県無人航空機産業推進協議会』が平成29年に起ち上がっている。その取り組みの一環として、県が開発中の次世代無人航空機をベースにした利用システム構想を増田教授が提案し、これがすこぶる振るっていた。
「そもそも宇宙開発の考え方は非常にシンプルなんです。ムダをいかに無くすか。宇宙船で人とモノを同時に運ぼうとしたら、かなりの安全性が必要なわけです。しかしモノだけ運ぶなら、最低限度の性能があればいい。たとえば今国内外で研究されているドローンを利用した宅急便も、人間を運ぶよりはうんと安い、ある程度のシステムでいいので、開発の順序としては効率がいいんです。それが成功したら次の段階で人が乗れる機体を開発するとかね。そうやってシンプルに順序立てて物流システムを考えていくと、まずは郵便局のような各拠点から家庭までを小型のドローンで運ぶ。そうすると次に必要になるのが、静岡~浜松とか、清水~下田とか、拠点同士の大量の荷物をどうやって運ぶかですよね。そこで県が開発している無人航空機が、これなんです」
「そもそも宇宙開発の考え方は非常にシンプルなんです。ムダをいかに無くすか。宇宙船で人とモノを同時に運ぼうとしたら、かなりの安全性が必要なわけです。しかしモノだけ運ぶなら、最低限度の性能があればいい。たとえば今国内外で研究されているドローンを利用した宅急便も、人間を運ぶよりはうんと安い、ある程度のシステムでいいので、開発の順序としては効率がいいんです。それが成功したら次の段階で人が乗れる機体を開発するとかね。そうやってシンプルに順序立てて物流システムを考えていくと、まずは郵便局のような各拠点から家庭までを小型のドローンで運ぶ。そうすると次に必要になるのが、静岡~浜松とか、清水~下田とか、拠点同士の大量の荷物をどうやって運ぶかですよね。そこで県が開発している無人航空機が、これなんです」
「ふつうのドローンは、プロペラだけで全てを支えないといけませんから、それだけエネルギーを消費する。機体が小さくて小回りが利くので10キログラム未満の荷物を運ぶには適しているかもしれないけど、100キログラムオーバーとかだと非効率なんです。そこで飛行機の形態、つまり翼のチカラを使おうと。翼があることによって揚力が発生して、通常は10のエネルギーが必要なところを、1のエネルギーで飛ばすことができる。ならばこれを拠点同士を結ぶ役割で使ったらどうかと。現在の物流もそういう使い分けはされていて、家庭への宅配はバイク、拠点同士は大型トラックですよね。それを小型ドローンとこの翼の付いた大型の垂直離着可能な無人航空機に置き換えて、新しい物流システムを構築したらどうですかと、県内外の方たちに提案しているところなんです。通常より長距離・高速航行が可能なので、災害時の状況把握など、使える幅は広いと思いますよ」
物事をシンプルに。航空宇宙工学の発想は単純明快だけに、この上なく効率的だ。それは、すべてのエンジニアにとって必要不可欠な素養かもしれない。この分野のおもしろさ、そして奥深さは計り知れないが、それを詳しく語るのはまた次の機会があればにしよう。ともあれ、増田教授の考える「静岡無人航空物流システム」が実現されれば、被災地への迅速かつ大量の物流支援など、あらゆるシーンでの活用が期待できる。その日の足音が聞こえてくるのがそう遠くない将来であることは、どうやらまちがいなさそうだ。
物事をシンプルに。航空宇宙工学の発想は単純明快だけに、この上なく効率的だ。それは、すべてのエンジニアにとって必要不可欠な素養かもしれない。この分野のおもしろさ、そして奥深さは計り知れないが、それを詳しく語るのはまた次の機会があればにしよう。ともあれ、増田教授の考える「静岡無人航空物流システム」が実現されれば、被災地への迅速かつ大量の物流支援など、あらゆるシーンでの活用が期待できる。その日の足音が聞こえてくるのがそう遠くない将来であることは、どうやらまちがいなさそうだ。
ライター:志馬 唯
静岡理工科大学 増田 和三 教授
長年の企業での宇宙機開発経験をベースに、宇宙・航空システム開発とそれに関わる航法誘導制御、飛行力学に関する技術開発を研究している。「今後、宇宙機や航空機は更に進歩を遂げ、人々の生活をより快適にしていくことが期待されます。その技術を静岡に普及するとともに、企業の皆さんとも協力して、静岡発の宇宙・航空技術の創出と利用促進を図っていきます。同時に、高校生など若い方にもその開発現場に参加してもらえる活動にしていくことを目指しています」
長年の企業での宇宙機開発経験をベースに、宇宙・航空システム開発とそれに関わる航法誘導制御、飛行力学に関する技術開発を研究している。「今後、宇宙機や航空機は更に進歩を遂げ、人々の生活をより快適にしていくことが期待されます。その技術を静岡に普及するとともに、企業の皆さんとも協力して、静岡発の宇宙・航空技術の創出と利用促進を図っていきます。同時に、高校生など若い方にもその開発現場に参加してもらえる活動にしていくことを目指しています」